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  最後の1ピース(実話) 
 

自分を知りたかった。

だから彼女はいつも自分のルーツを尋ねることに多くの時間を費やした。

時に神社仏閣を巡り、時に書籍を求め、時にパワースポットに足を運び

時にカウンセラー・チャネラーを称する人のところへ・・・、

こうして

「自分探し」が彼女の常態となり、彼女のエネルギーと意識の大半は

たゆむことなく、そこに注がれ、多くの時間を費やしていた。

 

ある日、1本の電話があった。

「突然だけど、お葬式が入ったの、

子どもあずかってくれない?」

「えっ、それは大変ね〜」

予定はあった、しかし、お葬式とくれば、無碍に断りにくい。

彼女は不本意にも、まる1日、子守をすることとなった。

彼女は心の中で何度も

「私にこんな暇はない」

そうつぶやきつつも、久しぶりの子守に時間をとった。

一緒に遊ぶ気分でもない。

そこで、何年も前にしまい込んだわが子のおもちゃ箱3つを引っ張り出しポンッと与え、

テレビを見ながら、はた目で危険がないかだけを監督しようと決め込んだ。

何とか言葉を覚えたばかりの女の子が

一番最初に始めたのが20ピースほどのキティのジグソーパズル。

お気に入りのキャラクターだったのか、スグにそれを始めた。

時折、見ていると「違うだろ〜逆向きだろ〜」と何度も言いたくなったが

下手に口出しすると手伝わされそうでやめた。

1時間ほどして、無口な女の子は何とか、全部をはめ込みつつあった。

と・・・

1ピースたりない!

それが子どもにも明らかになると、子どもは半べそをかきはじめた。

その時、彼女はチラと見てしまった。

パズルの台紙の下にある1ピースが、かすかに見える・・・・

教えてあげようとすると、そのタイミングで子どもは、そこから離れておもちゃ箱から

別のものをあさり始めた

積み木に、ブロックに、人形に、・・・・・・

手当たり次第という感じだった。

1箱全部だして広げると別の箱に・・・

彼女が、その1箱片付けると、また全部だして・・・・

この繰り返しに彼女も辟易とし疲れた。

「本当に落ち着きのない子ね〜」

半日も過ぎ、日も落ちた。

とりあえずお菓子をあげようと皿にスナック菓子を盛って子どもの前に

すると、しばらくジッと見つめていたが

食べるでもなく、いつものお菓子と違うのか

「ちがうー」

と言って、お皿をひっくり返した。お菓子は散乱した。

腹が立った、「親のしつけがなってない」

わが子なら引っぱたいて・・・・

ヤバイ、ヤバイ、クールダウン、クールダウン・・・・

 

ついに、部屋の中はおもちゃと散乱したお菓子で悲惨な状態となった。

「もう、どうにでもなれ」という気分だった。

丁度そのとき、チャイムが鳴った。

「ごめんね〜、助かったわ〜」

と親が顔をのぞかせた。

その次の瞬間、彼女はゾッとした。

子どもが

「ママー、キティちゃんの顔がないの〜」

と泣き叫びながら抱きついていったのだ。

「おお〜、知らなかった、この子、半日もパズルの1ピースを探してたんだ〜」

少し恐ろしくなった。

「いい加減にしろよ、そのために、ここまで散らかしやがって・・・・」

そう思ったが、口には出来ない。

母親は「ごめんね、人待たせてるから、またね」

と、そそくさと子どもを抱きかかえて帰っていった。

 

こうして、おもちゃだらけの部屋が残された。

彼女は、散乱した部屋を見ながら、今度は親が少し憎くなってきた。

「なんて親だ、一緒に片付けして帰ってもよさそうなもんだ。

お礼の品くらいでも・・・・」

こう思い出すと怒りが止まらなくなる。

実に不快な休日だったと思いつつも、ようやく部屋も片付きつつあった。

そして

案の定、最後におもちゃの下から、あのパズルが姿を現した。

この日、はじめて彼女は、

ニタリ

とほくそ笑んだ。

「馬鹿な子、この下に、ホラっ」

と、パズルの台紙をズラすと、確かに、キティの顔があった。

彼女は片付いた部屋の真ん中で

半(なか)ば、意地悪をするような心地で

「最後の美味しいところは、私がうばってやる」と

その最後のピースを静かにはめ込もうとしたその時、

彼女の心に妙な感覚が沸き起こった。

「憎きあの子に入れさせてあげなきゃ」

理由もなく、そうせきたてられたのだ。

彼女は飛び出して、車にのり、後を追った。

不幸にも、道に迷いこんでしまったが、1時間ほど探してようやく家に辿り着いた。

「こんばんわー、遅くにごめんなさ〜い」

親が出てきて開口一番。

「帰ってからも、キティちゃんの顔がない!キティちゃんの顔がない!

             って散らかし放題、ホラ、見てよ〜、訳わかんない」

なんと、その子は我が家でも最後のピースを探していたのだ。

「おお〜、確かに、我が家よりもヒドイ」

次の瞬間、彼女は子どもと目が合うと、

「ジャーン」

と言って最後の1ピースをポケットから出して見せた。

子どもは

「ヒャー」と奇声にもにた悲鳴を上げて突進してきた。

「あったよ」

と言ってピースを渡すと、なんともいえない笑みがあった。

彼女は、このとき初めてこの子が可愛いらしい。

と思った。

玄関口で彼女は、持参したパズルを渡した。

「入れなよ、パズルの下で、かくれんぼしてたんだよ」

「えっ・・・・うん」

その子は、1ピースを手にとり、静かに・丁寧に・・・はめ込んだ。

そばにいた母親は、「なんだ、こんな事か」という顔で

深くため息をついてあきれ返った。

彼女と子どもは、しばらく見詰め合って笑みを交わした。

その1ピースは、まるで、2人だけの大切な秘密のキーようだった。

帰り道

彼女の心は、日中とうって変わって満ち足りていた。

故知れず、満ち足りていた。

この1日がかけがえのないストーリーのようにも思えてきた。

「あの子、家にかえってまで・・・・

 あの子って、真っすぐだよな〜

 あの時の笑顔ったら、かわいかったな〜

 台紙の下にあるのも知らないで〜

 もっと早く教えてあげればよかったな〜」

そして、込み上げるものを感じた瞬間、

       女の子がピースをはめ込んだ時につぶやいた言葉が蘇った。

 

「近くにあったんだ」

 

次の日から彼女は変わっていた。

自分探しの旅は、あたかも最後の1ピース探しのように思え、

彼女が自分探しの旅をやめたのはその時からだった。

「全部、近くにあるんだ」

それは、女の子が、そっと彼女の人生に捧げた最高のメッセージだった。

 

おわり

 

 ※ このお話は、ある50代のご婦人の話を元に作成いたしました。    安部 浩之 作

 ※ このお話から感じ取って欲しいこと

      ・大切なものは、いつも手元にある、ということ。

    ・現実にフォーカスすれば、過去も未来も全てが封印されていること。

    ・過去のみならず、未来も只今に影響していること。

    ・身近なところに全てのメッセージが散りばめられていること。

    ・発想を変えるだけで、簡単に人生が変わること。

    など